大手プラント会社の関連会社で財務会計システムの運用・保守エンジニアとして活躍している株式会社テクノプロ テクノプロ・IT社横浜第一支店の田崎哲也オフィスマネージャに、仕事に関するさまざまなことをお聞きしました。
「普通に動いて当たり前」を維持する難しさ
―システムの運用・保守とはどのようなタイプの仕事だとお考えですか?
田崎 私はIT社に入社してから13年間同じお客様の所で運用・保守の仕事をさせてもらっています。運用・保守と聞くと、「簡単で誰にでもできる仕事」という印象を持たれる方も多いのですが、「普通に動いて当たり前」であるシステムを常に動かし続けて、トラブルが発生した時には短時間で復旧させるというのは実はものすごく大変なことです。非常に責任の重い、重要な仕事だと私は考えています。
―運用・保守の仕事を語る上で欠かせないものとして、英国商務省(OGC)が80年代末に公表した「ITIL」というものがあるそうですね。
田崎 ええ、ITILは「ITサービスマネジメントにおける成功事例をまとめたフレームワーク」が書かれた書籍群です。ITILは全部で8冊あって、日常的な運用管理作業についての「サービスサポート」と、中長期的な運用管理計画に関する「サービスデリバリ」の2つがテーマになっています。サービスサポートは、「どうすればユーザーが望むサービスを適切に利用できるか」、サービスデリバリは「どうすればビジネスに必要なITサービスを適正なコストで効率よく提供できるか」について書かれています。運用・保守業務を担当するエンジニアにとって必読書であることは間違いありませんね。
運用・保守は「お客様視点」で
―この仕事で大切なスキルは何でしょう。
田崎 運用・保守は、「定常的な監視業務や発生したトラブルの分析を通じた改善提案などのトータルサポートで、システム活用におけるお客様の満足度を上げる仕事」だと考えています。ITに関する知識やスキルはもちろん、コミュニケーション能力をはじめとする基本的なビジネススキルも欠かせません。
―ビジネススキルが求められる理由を詳しくお聞かせください。
田崎 運用・保守業務は「人」を相手にする仕事なんです。しかも、私たちが対峙する方々の大半はいわゆる「専門知識のないユーザー」です。 電話やメールでエラー発生の問い合わせを受けると、そのような「専門知識のないユーザー」から今起きていることを正しく聞き取らなければなりません。そして、その後、原因究明、対策検討、お客様への説明、改善提案、他部署連携による情報共有といった業務を行っていきます。こういったすべての業務は、「お客様にいかに満足を提供するか」という点にフォーカスして進めなければなりません。ですから、運用・保守業務は、単なる専門知識だけでなく、傾聴力、分析力、論理的に考える力、プレゼンテーション能力、コミュニケーション能力、あとは・・・忍耐力?(笑)なども必要とされる仕事ではないかと思います。
研修も『主体性』で意義深いものになる
―これまで受けたことのある研修で、役に立ったものがあれば教えてください。
田崎 では、体験談をお話しします。Oracleのパフォーマンスチューニングの依頼を受けた際のことです。当時はまだ知識にあまり自信がなかったので、本やWebから情報を得てどうにか課題を解決し、お客様には満足してもらいました。ですが、自分自身はどこか釈然とせず、「正しい解決方法だったのか?」という疑問が残っていたのです。そんなとき、ちょうどOracleの研修があり、正しい手法を知る機会に恵まれました。結果、「手法」という意味での発見はありませんでしたが、「自分のやり方は間違っていなかった」ことが確認できたのです。自信を得ると同時に、研修は受講する目的や姿勢がはっきりしていると意義深いものになると実感しました。
―研修において大事なのは、目的意識を持って、主体的に取り組むという姿勢なんですね。
田崎 そのとおりです。会社や配属先から言われて研修を受ける機会は誰にでもあると思います。研修を受講する際はテクノプロ・グループの「6つの約束」にも掲げられている「主体性」を大切にして取り組んでほしいですね。
運用・保守の仕事はきっと将来役に立つ
―運用・保守の仕事に携わる若い人たちへアドバイスを。
田崎 運用・保守の仕事をすることは、「システム全体の構成を知ることができる良いチャンスをもらった」と考えてほしいですね。「システム全体」という言葉にはシステムを使う「人」とその「使われ方」という意味も含まれています。システム的に欠陥がなかったとしても、利用するユーザーは思い込みで操作するのが常で、開発者の思惑通りに使われることは少ないものです。たとえマニュアルに記載があったとしても、「それはマニュアルに書いてあります」と言ってしまっては身も蓋もありません。まずは気持ちよく説明する、それから最後に「今、ご説明した内容はマニュアルの○○ページにありますので、また困ったら読んでみてください」なんてことが言えたらお客様に最高の満足を提供できるのではないでしょうか。
―そうした経験は将来にも役立ちそうですね。
田崎 ええ、運用・保守の仕事を経験した後に開発業務に携わる機会があれば、開発者目線ではなくお客様目線のシステムが作れると思います。マニュアルがなくては使い方がわからないシステム、ではなく、わからないときにさっとマニュアルを参照するだけで使いこなせる・・・そんなシステムを作れるエンジニアになってほしいと思います。
運用・保守は「お客様ありき」の仕事であり、だからこそそこに奥深さや面白さがある・・・この分野に興味のある方にとって、田崎さんのお話は非常に貴重で、大いに参考になるのではないでしょうか。
(2016.06.03)