ルールやマナーの持つ意味を考えビジネスを
株式会社テクノプロ テクノプロ・エンジニアリング社水戸支店で受託開発業務に携わる園部優太さんに、仕事に関するさまざまなことをお聞きしました。
やりがいと責任が共存する受託の仕事
―テクノプロ・エンジニアリング社水戸支店の受託開発業務をスタートさせたのは園部さんだとお聞きしました。その経緯をお聞かせください。
園部 受託業務をスタートしたきっかけは、とにかく「よいお客様に巡り合えた」という一言に尽きます。もともと私はエンジニアとしてお客様先に派遣されて常駐する立場でした。それが配属から3年ほど経過した頃、リーマンショックなどの影響もあって組織の再編成が検討されることになったんです。配属先の上司から「今の園部君のアウトプットなら受託という形式で仕事を任せられると思うんだけど、やってもらえないかな?」というお話をいただきました。非常に嬉しかった反面、経験が浅かった私は「まとまった仕事を引き受けて、品質と納期を担保しながら、お客様にご迷惑をお掛けせずに、メンバーをまとめて業務をこなしていけるだろうか…?」という不安も感じました。ただ、お客様から「最初の1年は一緒に仕事をしながらうまくいく方法を見つけていこう」とまで言っていただいたんです。こんなにありがたい話はありません。さっそく支店長に相談し、請負や受託の勉強を始めたことをよく覚えています。そんな形で受託開発業務をスタートさせ、今では約15名のメンバーと一緒に大きなトラブルもなく業務を進められています。私を信頼して任せてくださったお客様に何とか恩返ししたい一心で責任感を持って仕事に取り組んでいます。
故障時の運転状態まで記録するECU
―どのようなお仕事をされているのか、可能な範囲で教えてください。
園部 私たちは、自動車の故障の種類を示す『DTC』(Diagnostic Trouble Code)というコードを読み取るために使われるスキャンツールを動作させるソフトの開発を手がけています。最近の自動車は一般的に『ECU』(Electrical Control Unit) と呼ばれるコンピュータからの指示を受けて動いていますが、その動作もECUによって逐一監視されていて、挙動もすべて記録されています。そして、ECUが車体に何らかの異常を検知するとその内容に応じてDTCが記録され、そのコードを見れば故障の内容が判別できる仕組みになっているのです。故障箇所を示すアルファベットひと文字と故障内容を表す4桁の数字で構成されるDTCには、世界共通のコードと各自動車メーカーがそれぞれ独自に設定しているものがあります。
ご存知かどうか分かりませんが、運転席のステアリングコラムやコンソールの周辺などにはDTCの吐き出し口として『DLC』(Data Link Connector) というコネクタが装備されています。DLCにスキャンツールを接続すると車のバッテリーからの給電を受けて自動的に電源がオンになり、ECUが記憶しているDTCのデータがスキャンツールに表示されて故障の起こった場所と内容、さらにはその時の運転状態まですべて分かります。DTCの内容を参照して修理を済ませたら、ECUに記憶されているDTCを消去してから試運転で故障が発生した運転状態を再現する作業を繰り返し、ECUにエラーが記録されなくなれば修理完了です。先ほど申し上げたとおりメーカーごとにコード体系が異なりますし、ディーラーによって要求仕様が異なる場合もあるためスキャンツールにも特定のメーカーやディーラー向け、あるいは個別車種用の専用品から、ある程度汎用で利用できる市販品まで様々な製品が存在しており、私たちが開発しているのもそういったスキャンツールのソフトウェアなんです。
ビジネスルールの意味を考える
―受託センターには若いエンジニアが多いようですが、メンバーにはどのようなことを期待していますか?
園部 まず、私は「経験が浅いから」「新卒だから」という理由で任せる仕事を限定するつもりはありません。もちろん、経験やスキルを考慮して各自ができる仕事、できそうな仕事をお願いするようにはしていますが、いずれはメンバー全員が上流工程で活躍できるようになってもらいたいと考えています。そのためには、技術力や知識だけでなく、仕事の進め方も含めたビジネススキル、マナーについても身につけなければなりません。メンバーにはその意味をよく自身で噛みしめて欲しいですね。
“経験”を言い訳にせず主体的に取り組む
―例えばどのようなルールやマナーでしょうか?
園部 身近な例としてよく言われる「『ホウ・レン・ソウ』が大切」という話もそうだと思います。ただ単に『報告・連絡・相談』をするだけで終わるのではなく、「なぜ『ホウ・レン・ソウ』が大切なのか」を考えることが重要です。
時として「どうして報告しないんだ!」「いえ、報告しましたが…?」というようなやりとりが生まれることがどんな職場でもありますよね。それはきっと、報告する側が話題には出したのかもしれませんが、本当の意味での『報告』ができていなかった結果ではないかと思います。報告とは何かということをよく考えて実行していれば、そのような行き違いは起きなかったはずです。ビジネスの世界では、「経験が浅いから」ということで許される範囲には限りがあります。一人のビジネスパーソンであるという自覚を持って、自分から主体的に意味や理由を考えながら仕事に取り組んでもらいたいですね。
エンジニアにとって大切なのは技術力、というのが一般的な認識です。しかし、その前に一人ひとりがビジネスパーソンとして必要なルールやマナーの意味をしっかりと理解していなければならない…そういったことをあらためて思い出させてくれるお話だったのではないでしょうか。
(2016.05.09)