株式会社テクノプロ テクノプロ・デザイン社品川支店の島田雅道さんは、電子部品メーカーでの素子設計や大手SIerでのパッケージソフト開発や通信基盤開発などの経験を経て2014年1月1日にテクノプロ・デザイン社に入社されました。過去すでに国家資格である情報処理安全確保支援士を取得していた島田さんですが、支店のクライアントリーダーとなってから技術士の資格取得を決意し、情報工学部門の一次試験に合格されたそうです。品川支店のクライアントリーダーの一人として支店全体の底上げを目指した若手の育成に注力し、「『啓蒙活動』が私の役割だ!」と言い切る島田さんをお訪ねし、若手エンジニア育成に対する“熱い思い”をお聞きしました。
若手への範を示すために技術士資格取得にチャレンジ
―島田さんは、なぜ技術士の資格を取ろうと思われたのですか?
島田 資格を取ろうと考えたきっかけは、品川支店のクライアントリーダーになったことです。若手のキャリアプランについてあれこれと思案する中で、キャリアを向上させる上で資格取得はどうしても避けて通ることができないという考えに至り、だったら自分が「背中で見せる必要があるぞ!」なんて思っちゃったんです。ただ、その言葉に偽りはないのですが、実はそんな格好の良い動機だけではありませんでした。クライアントリーダーとして若手エンジニアを育成することになって、「自分自身がこれまでの経験から得たものを伝えることは、本当に若手エンジニアのためになるのだろうか。ただの自慢話や自己満足に終わってしまうんじゃないか…?」という思いに駆られたんです。要は自分自身の経験に、人に伝えるだけの価値があるのかどうかが少し不安だったんですね。その疑問に対する答えを得るために自分のこれまでの仕事を一度振り返ってみようと考えましたが、「それなら同時に今の自分のレベルを確認する意味で資格試験を受験してみよう。どうせチャレンジするなら国家資格がいいな」と思い立って技術士の試験を受けることにしました。
―そうして挑戦された技術士の一次試験に見事合格されたそうですね。
技術士の一次試験には昨年、合格しました。誤解を招く言い方かもしれませんが、それほど勉強には苦労しなかったんです。実際に受験勉強に取り組んでみて分かったんですが、これまで業界を代表するような大手企業のプロジェクトへの参画が多かった私にとって、教材の中に出てくる開発用語の大半は実務や会議などで常に使っていたものですし、開発計画・予測・プランニングなどといった開発手法についても現場では当たり前の一般化した概念でした。
ですから、受験のために新たに用語を覚えたり、知らない概念を理解したりするようなことは比較的少なく、自分がこれまで経験してきたことを確認するといった感じでしたね。とはいえ自分が飛び抜けて優秀な開発者だと言いたい訳では決してありません。何も特別なことではなく、誰もが普段からちょっと意識するだけでできることだと思いますよ。今年は二次試験に挑戦して本格的に技術士を目指しているところです。二次試験では論文と口頭試験があり、正直なところ独学での突破は少しハードルが高いと思っていますので、テクノプロ・デザイン社の「自己実現支援活動」制度の援助を受けながら限られた時間で効果的に学習し、必ず合格したいと思っています。
資格の意味と大切さを訴える『啓蒙活動』が自分の役割
―若手エンジニア育成に向け、お考えの一端を教えてください。
島田 品川支店には約230名のエンジニアが所属していますが、比較的下流の工程を担当しているケースが多いという現状がありますので、支店全体でエンジニアのスキルを底上げするためのキャリアパス施策に、今ものすごく力を入れています。私も駆け出しの頃は下流工程の仕事からスタートしましたので、そのこと自体を否定するつもりはまったくありません。下流工程を担当している時から正しい開発手法と開発用語を覚えること、それが非常に大切であることを伝えたいんです。我流とまでは言わないまでも、特定の会社に依存したやり方を身に付けても社会で通用するエンジニアにはなれませんからね。
この機会に私が考える「資格と実業務との関係」について、ぜひみなさんにもお伝えしたいと思います。開発経験豊富な方にとっては当たり前で少し退屈な話かもしれませんが、若手エンジニアと会話する時の材料のひとつくらいに考えていただければありがたいですね。
若手に限らず、よく「スキルアップのために資格を取りましょう!」と勧められることがあると思いますが、言われた側にしてみると「資格を持ってるほうが良いのは分かるけど、別になくても仕事はできてるし、本当に必要なの?」という疑問を持つこともあるのではないでしょうか。もちろん個人でゲームなどを作って楽しむのであれば資格は必要ないでしょう。ですが、システム開発では考えられないほど多くのエンジニアが参画する大規模プロジェクトも多々あります。
そんな時にプロジェクト進行のためのルール決定からはじめていたらどうなるでしょうか?まずルールを決めるのも大仕事ですし、ましてやそのルールを全員が覚え、実行するようになるまでに途方もない時間が必要になってしまいます。そんな非効率な時間と労力を使わなくても済むように、「正しい開発手法」と「共通の開発用語」がルール化されたものがすでに世の中には存在していて、それを習得していることを示すのが資格です。システム開発者は、そういったルールをよく理解し、ルールに従って開発を進めることが大切ですし、
それによって先輩と同じ価値基準で開発業務に携わることができるようになるんです。つまり、「スキルアップのために資格を取りましょう!」という言葉は確かに資格取得を勧めるものではありますが、資格が取れたかどうかよりも取得までの段階で正しい開発手法と共通の開発用語を覚えることが大切なのだと思います。
大手と呼ばれる企業は仕入先やお客様などのサプライチェーンが長いため、プロジェクトのメンバーそれぞれが自分勝手に動いてしまうとプロジェクトがいつまでもまとまりませんし、さまざまな誤解が生じる原因にもなります。多くの大手企業では、それを避けるためにどの企業に行っても通用する正しい開発手法と共通の開発用語が導入されています。つまり、学者・研究者・情報産業・現場のエンジニアなど多くの人々が長年掛けて作り上げ最適化された開発環境で実際の開発が行われているのです。ただ、誰もが大手企業のプロジェクトに参加できる訳ではありませんし、大手企業だからといって必ずしも世間一般の共通ルールで開発を進めているとは限りません。そこで拠り所になるのが資格や、その資格取得に向けた学習なんですね。
しかも、そういう基礎的なことは早い段階から身に付けることが肝要で、いったん自己流のやり方が染み付いてしまうとなかなか正しいやり方に戻ることができなくなってしまうものなんです。そんな想いを持っていますので、「資格の大切さを訴える『啓蒙活動』が私の役割だ!」と考えています。先ほど、私の受験勉強についてお話した際に「自分が特別優秀な訳ではない、ちょっと意識するだけで誰にでもできる」と言いましたが、まさにその『意識』とは業務に関係のある資格に関心を持ちつつ今の業務の進め方が正しい方法なのかを確認することであり、それがスキルアップに向けた大切な習慣だと思います。
―島田さんは若手の育成も手がけつつご自身もエンジニアとして活躍中ですが、差し支えない範囲で現在の仕事内容についてお聞かせいただけますか。
島田 現在のクライアントは大手印刷会社の情報システム部門で、私は派遣エンジニアとして3D認証用のサーバ構築を担当しています。3D認証は一般的には『3Dセキュア』と呼ばれている技術で、ネットショッピングなどにおけるクレジットカード決裁をより安全に行うため、3つのサーバで認証させる方法です。クレジットカード番号と有効期限を入力するだけでカード決裁ができるオンラインショップはまだ多く存在しますが、それではカードに記載されている情報だけで決裁できてしまいますので、紛失した際には不正使用の憂き目に会ってしまいます。それでは安心してカードを紛失できませんので(笑)、認証に「自分しか知らないパスワード」の入力を必要としたシステムが3Dセキュアなのです。
その結果、本人以外はウェブ上でカード決裁ができないようになりますが、あくまでもウェブ決裁での安全性を確保するための技術ですので、店舗での対面販売で不正利用される可能性があります。カードの紛失には十分ご注意ください。
カード会社の説明のようになってしまいましたが(笑)、その「本人しか知らないパスワード」を認証するためのサーバを構築するのが私の仕事です。カードはどんどん使い勝手が良く、かつ安全になっていきますが、それに伴ってシステム開発も複雑になっていくんですね。
家族や自分自身の時間を大切にしたいと考えテクノプロ・デザイン社へ
―入社されて3年半とのことですが、テクノプロ・デザイン社に入社した経緯をお聞かせいただけますでしょうか。
島田 もう3年半も経ったんですね。テクノプロ・デザイン社にはつい最近入社したように思っていましたが…。
入社する前は、本当に忙しかったんですよ。ちょうど携帯電話からスマートフォンに切り替わって行く時代で、私は基地局の基盤システム開発を担当していました。今でこそメディアも『働き方改革』を合言葉にして過重労働問題や休暇などの話題が頻繁に取り上げるようになりましたが、その頃は ― 業界の慣習も少し影響していたかもしれませんが ― 「過重労働削減への取り組み」なんて話題はほとんど聞いたことはありませんでした。特にその当時の私は、いわゆる個人事業主のような形で仕事をしていましたので、なおさらそう感じるのかもしれません。個人事業主の大きな心配ごとのひとつは仕事がなくなってしまうことだと思いますが、おかげさまで私の場合は仕事が途絶えることがなかったので「仕事がなくなったらどうしよう…」と深刻に心配したことはありませんでした。
逆に、そんなことを考える暇もないくらい忙しく仕事をしていた、というのが正直なところです。とはいえ、成果物を納品したあと次の仕事がなくて廃業するような例も身近にたくさん見てきました。忙しく仕事をしている間は次の仕事の注文を取るための営業活動なんてできませんから、そういう状況に陥る人が多かったのも考えてみれば当然のことだと思います。その頃は年齢も44歳になったこともあり、毎日深夜まで仕事をするのではなく、もう少し家族や自分自身の時間が持てる仕事を考えたいと思って求人サイトに登録してみたんです。そうしたら登録後まもなくテクノプロ・デザイン社からスカウトメールが届きまして、内容を見たらすごく興味のある仕事でしたので、早速説明を聞かせてもらうことにしました。実際に話を聞いてみたら、会社の規模やプロジェクト・取引先企業の豊富さにまずびっくりしました。さらに教育研修制度や各種の福利厚生制度が整っていることを知り、派遣会社のイメージが根底から覆されました。なによりも、家族や自分自身の時間が持てることにはとても魅力を感じましたね。ちなみに、正社員の派遣があることをその時に初めて知りました。
―今後の支店のキャリアパス設計計画をお聞かせください。
島田 計画についてはちょうど現在、支店長や他のリーダーたちと立案している最中です。少し中長期の取り組みになるかも知れませんが、品川支店のエンジニアには徐々に上流工程の仕事を手がけるようになってもらいたいですし、大手企業のプロジェクトに携わってもらいたいと思っています。継続的な取り組みを通じて品川支店全体が底上げされ、本当の意味で先輩が後輩を育てることができる環境を整備していけたら非常に嬉しいですね。かなり偉そうにいろいろとお話してしまいましたが、私の専門はシステム開発なので、機械や電気・電子のエンジニアに対する適切なアドバイスという面では正直なところ少し不案内な部分があります。支店のみなさんをはじめ、本社の教育研修課やキャリアデザイン推進課の協力を仰ぎながら一歩一歩進めて行こうと思っています。
今回の技術士試験に向けてテクノプロ・デザイン社本社の「自己実現支援活動」の担当者の方に相談した際にいただいたお話がとても印象に残っていますので、最後にご紹介します。
“『技術士』になること自体がテクノプロ・デザイン社におけるエンジニアとしてのひとつのキャリアモデルであると考えています。自己実現委員会でもかねてから技術士取得に向けた支援活動は注力すべき課題として取り組みを強化しています。自己実現委員会の存在目的は支援活動そのものではなく、支援を活用して自己実現を果たしてもらうこと(=夢を実現すること)だと考えています。「本当の意味で自己実現を果たすエンジニア」が増えることで、会社の風土も、より一層活気溢れるものへと変化していく。テクノプロ・デザイン社のこんな姿の実現に向け、自己実現委員会は一人ひとりのエンジニアに対して個別最適な支援活動ができればと思っています。”(担当者談)