お客さまインタビュー

メーカーの開発責任者の方に思い切って聞いてみました!

八千代工業株式会社は、燃料タンク・サンルーフ・樹脂部品など自動車部品を中心に、福祉車両や特装車などの完成車、珍しいところでは陸上競技用車いすを開発しています。
さらに、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)に採択され、燃料電池車の普及を見据えた水素ステーション用蓄圧器の開発も行っています。
同社では、栃木研究所・埼玉研究所・北米研究開発センター(米国オハイオ州)の3拠点で商品開発を行っていますが、今回、栃木研究所におじゃまし、栃木研究所所長 堀木俊也様に技術サービス(派遣技術者)の活用についてお聞きしました。

 

栃木研究所に派遣技術者はいらっしゃいますか?

堀木所長 派遣で来てくれる技術者の方がいなければ仕事が進まないというのが正直なところです。栃木研究所では約200名の技術者が働いていますが、ここ2年くらいでずいぶん派遣技術者の方が増えまして、今では2割くらいになりました。この研究所では主に樹脂製の燃料タンクとサンルーフを取り扱っていますが、とにかく忙しいですね。

なぜ、そんなに忙しいのですか?

堀木所長 テーマや開発工数が増加傾向にあることが理由ですが、工数が増える要因はさまざまです。例えば、最近の自動車はガソリンエンジンからハイブリッドへ、ハイブリッドからプラグインハイブリッドへと変化しています。この変化に伴い、当社の納品先となる完成車メーカーからの要望は従来にも増して多岐に渡るようになりました。加えて、2輪駆動や4輪駆動、販売国別カスタマイズや販売国独自モデルの設定などさまざまな要素が絡み合い、仕様が多種多様になり、設計・解析・検証など全ての開発工数が増加しています。
また、燃料タンクは重要保安部品ですので、法規対応の側面からも細かな改良が求められます。さらに大きな声では言えませんが、設計開発現場では必ずしも計画通りに進まないこともありますし、新しい技術の導入など大きな変化が起こるときは、不測の事態が起こることもあり得ます。新モデルやモデルチェンジが多い時は、まさに、ねずみ算式に開発工数が増える感じですね。

自社採用では足りないという事でしょうか?

堀木所長 開発工数の増加に伴い、当然当社でも社員採用の努力をしていますが、募集を始めてから採用まで早くて半年、専門性が高い仕事になると1年かけてようやく採用ということも珍しくありません。 必要なタイミングから1年も経過したのでは、開発計画そのものが滞ってしまいます。これでは競争相手に負けてしまいますし、何よりもお客様である完成車メーカーに迷惑をかけてしまいます。
また、これまで当社が得意としてこなかった技術領域を強化する際には、派遣技術者の方は頼りがいのある戦力になります。
さらには私見ですが、開発工数がピークの状態に合わせて社員を採用することが、必ずしも経営的に正解とは言えない側面もあるかもしれません。
このように適時適切な開発力の確保や専門技術の獲得など、いくつかの理由から即戦力の派遣技術者の方に頼らざるを得ない状況です。また、派遣技術者の方はさまざまな経験をされているので、開発を進める上ですごく頼もしくありがたい存在です。他のメーカーさんのことは詳しくわかりませんが、開発現場におけるこのような技術者不足の事情は、おそらく当社に限ったことではないと思います。

せっかくなので、燃料タンクやサンルーフについて“人に話したくなるような事”を教えてください?

堀木所長 実は燃料タンクは決められたスペースに納めさえすれば良い、というような簡単なものではないんです。給油口は燃料補給時以外は閉めていますが、タンク内でガソリンが気化して内圧が徐々に高くなっていくんです。ガソリンスタンドで給油口のキャップを開けると「シュー」という音とともにガソリン蒸気が出てきますよね。この蒸気を適切に処理しないと燃料タンクから燃料が漏れることにもつながります。私たちが手掛ける燃料タンクは錆に強い樹脂製。燃料を安全にハンドリングし、自動車のユーザーの方々が安心して運転してもらえるようにすることが私たちの腕の見せ所なんです。

また、ハイブリッド車をはじめとして、最近のクルマはとても静かになりました。何も対策しなければ、信号で止まった時に燃料タンク内のガソリンが揺れる「ポチャン、ポチャン」という音が聞こえてしまうんです。この音を抑制するために、タンク本体に溝形状を施したり、タンク内部に波消し板を設置したりといった工夫をしているんです。
サンルーフは、最近日本では装着したクルマをほとんど見なくなりました。では、どうしてサンルーフの開発でそんなに忙しいのか。
米国に次ぐ自動車保有台数を誇る中国ではフル装備の車がステータスになっていて、ほとんどのクルマがサンルーフ付きなんです。また、世界中でニーズが増えているSUVも、サンルーフの装着率が高いですね。

堀木所長様、長時間にわたり楽しいお話をお聞かせいただきまして誠にありがとうございました。(2017.02.01)

八千代工業株式会社
設立:1953年8月27日 従業員数:1,364名(2016年3月31日現在)
株式:ジャスダック上場
事業内容:自動車の機能部品(燃料タンク・サンルーフ)の開発・製造と板金部品・樹脂部品の製造。
HONDA向け軽自動車の受託生産。
国内拠点:本社(埼玉県狭山市)、柏原工場(埼玉県狭山市)、鈴鹿工場(三重県鈴鹿市)、鈴鹿工場亀山事業所(三重県亀山市)、四日市製作所(三重県四日市市)、埼玉研究所(埼玉県狭山市)、栃木研究所(栃木県さくら市)
海外拠点:アメリカ、メキシコ、ブラジル、中国、タイ、ベトナム、フィリピン、インド、インドネシア、ドイツ
ホームページ http://www.yachiyo-ind.co.jp/

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