中田喜文の「エンジニア。データからはこう見える!」

Vol.16 近くてもまだまだ知らない中国① 「中国の技術者市場ってどれほど大きいの?」

同志社大学STEM人材研究センターの中田喜文です。
2022年は、中国の話題からスタートします。
今回を含め3回シリーズで中国についての情報を皆さんと共有したいと思っていますが、その1回目のテーマは中国の大きさについてです。大きさというのは、もちろん皆さんの興味のある技術者労働市場についてです。

中国が世界で一番人口の多い国であることはご存知の通りです。さて、どれほどの人が中国に住んでいるか、ご存知ですか。
なんと日本の人口の11倍以上の14億人です。
経済規模でも同様です。日本の経済規模を上回ったのが今から10年以上前の2010年ですから、中国を上回る経済大国はアメリカだけとなりました。そのアメリカを上回るのも時間の問題で、11年後の2033年には中国がアメリカを追い抜くと予想されています。

さて、話題を今日のテーマの技術者労働市場に戻しましょう。
はたして、その超大国中国ではどれほどの技術者が働いているのでしょうか。近年日本の技術者の転職先として中国企業が注目されています。皆さんの中にも、中国における技術者の労働市場規模 などについて興味をお持ちの方もおられるかも知れませんね。
私も以前から中国企業の技術者の労働条件や働き方に興味があり、中国の研究機関や研究者との共同研究を行って来ました。しかし、今回改めてマクロに見た中国技術者労働市場の大きさについてデータを探査して驚きました。なんと中国全人口を対象とする就業状況に関する調査結果は、2012年に公表されてからは、この10年新しいデータは発表されていません。2012年に公表されたのは、2010年に実施された中国の国勢調査です。(中国名は「中国2010年人口普查」。)

中国は10年に1回、国勢調査を行っていますから、2020年に実施された調査結果は、今年の夏頃には公開されるでしょう。それまでは、最新データは2010年ですので、今日のクイズもそのデータに基づいて作成しました。

では、今月の問題です。世界の経済3大国、日本、中国、アメリカの3か国を較べた時、技術者労働市場の大きさは、次のどの比率が正しいでしょうか。ここでは技術者労働市場の規模を技術者数で表すことにします。

1)日本:中国:アメリカ=1:5:10
2)日本:中国:アメリカ=1:2:5
3)日本:中国:アメリカ=1:5:2
4)日本:中国:アメリカ=1:10:5

今回もヒントは2つです。まずは、人口です。
2010年のこれら3か国の人口は、日本1億2,500万人、中国14億1,800万人、アメリカ3億3,100万人です。つまり比率に直すと、日本:中国:アメリカ=1:11.3:2.6です。

では、GDPではどうでしょう。
同じく2010年のIMF 推計では、日本5兆7,000億ドル、中国6兆300億ドル、アメリカ15兆500億ドルです。比率では、日本:中国:アメリカ=1:1.1:2.7です。

これらをヒントに今月のクイズを考えてみてください。日、中、米の技術者労働市場の大きさは以下のどれが最も正解に近いでしょうか。

1)日本:中国:アメリカ=1:5:10
2)日本:中国:アメリカ=1:2:5
3)日本:中国:アメリカ=1:5:2
4)日本:中国:アメリカ=1:10:5

以下の表をご覧ください。実は、国によって統計上の技術者の定義は異なります。そこで、2010年における3か国の労働統計から、日本の標準的な職業分類に基づき、中国とアメリカの技術者数を私達の研究センターで再推計してみました。その結果が以下の表です。

日中米3か国技術者数推計:2010年

日本
中国
アメリカ
2,153,670
10,048,750
4,467,110

この数値に基づき3か国の技術者数比率を求めると、日本:中国:アメリカ=1:4.7:2.1となります。つまり正解は、3)です。やはり中国は技術者市場においても世界一でした。2010年時点で日米技術者を合わせたよりも1.5倍の規模があった中国、今年発表される2020年統計ではどうなっているか、発表が待ち遠しいですね。

同志社大学STEM人材研究センターの目的の一つが、「科学技術の領域で活躍する方々がより創造的に活躍できるための環境と施策の構築に資する」研究を行うことです。日本の科学技術発展のためにも、多くの技術者が適材適所で活躍できる環境作りに寄与できる研究を行っていきたいと思います。

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