皆さんは、ご自分の技術力に対し、どれほど自信をお持ちですか?
「自分ならどこに行ってもやっていける。アメリカやドイツの会社に移っても大丈夫。」くらいの“自信”をお持ちですか。
「どの会社に行ってもやっていける」、というレベルの自信を持っている方はどれほどいるのでしょうか?
人によっては、技術力はあるのに自信はそれほど、という方もいるでしょう。
実は、自分の技術力についての自信は、男性と女性、ソフトウェア技術者とハードウェア技術者※ 、それから若手・中堅・ベテランといったキャリアのステージで特徴的なパターンが存在しています。どうやら扱う技術の性質や経験の違いが技術力に対する自信に影響しているようです。
※ここでは、ソフトウェア技術者以外の方をハードウェア技術者と呼ぶことにします。
そこで、今週のクイズです。
Q. 以下の技術者の中で、技術力に対する自信が最も高いのはどのグループでしょうか?
データは女性についてもお示ししますが、選択肢が多くなりすぎますので、クイズは男性に絞りました。
①男性、ハードウェア技術者、若手
②男性、ハードウェア技術者、中堅
③男性、ハードウェア技術者、ベテラン
④男性、ソフトウェア技術者、若手
⑤男性、ソフトウェア技術者、中堅
⑥男性、ソフトウェア技術者、ベテラン
但し、ここでは、35歳未満を若手、45歳以上をベテランと考えています。
毎回クイズにはヒントを差し上げていますので、今回もヒントです。今回の調査では、自分自身の技術に対する自信を、「自分の技術が社外でどの程度通用すると思いますか?」と尋ねることで指標化しました。そして、その問いの後で、自信の裏付けのひとつになりそうな週当たりの平均自己啓発時間も尋ねています。
そこで、週当たりの自己啓発時間が、どのような状況になっているかをお教えします。表1をご覧ください。
表1 週当たりの自己啓発時間
皆さんの自己啓発時間と比べて如何ですか?
この自己啓発時間のグループ間の差異には、幾つかの傾向があるように見えます。
1つ目は、男女差です。男女を比べると、女性より男性の方が、自己啓発時間が長い場合が多いです。
2つ目は、性別と経験年数が同じなら、ハードウェア技術者よりソフトウェア技術者の方が長い傾向があります。
3つ目は、男性については、若いほど自己啓発時間が長い傾向があります。
以上の情報、参考になりますか。勿論、技術力は自己啓発時間の長さだけで決まらないと思います。日々の仕事を通して学ぶこと、多々あるでしょう。その意味では、経験の長さも大切な要因ですね。
では、これらの情報をヒントに今週のクイズにチャレンジしてください。クイズを再掲します。
Q. 以下の技術者の中で、技術力に対する自信が最も高いのはどのグループでしょうか?
①男性、ハードウェア技術者、若手
②男性、ハードウェア技術者、中堅
③男性、ハードウェア技術者、ベテラン
④男性、ソフトウェア技術者、若手
⑤男性、ソフトウェア技術者、中堅
⑥男性、ソフトウェア技術者、ベテラン
では正解発表です。各グループの中で技術力に対する自信を持っている人の割合を見てみましょう。
表2をご覧ください。
表2 自分の技術力に自信を持つ割合
如何ですか。技術力に自信を持つ割合は、男性が高く、男性の中でその割合が最も高いグループは、ハードウェア技術者の場合はベテラン、ソフトウェア技術者では中堅の方です。
ですから今月の問題の選択肢の中では、正解は③と⑤となりますね。
(正解が2つもあるのはズルいって・・・?そんなこともあります。)
私には、この表2の結果は、先にお見せした表1の自己啓発時間が持つ効果と経験による学習効果が合わさった数値のように見えます。若い時から続けてきた自己啓発に、経験が加味され着実に技術力に対する自信が高まるのではないでしょうか。
ソフトウェア技術者の方では、自信のピークがベテラン期ではなく、中堅期となるのは、技術の変化がソフトウェアでは、より速いことが影響しているように思えます。
つまり、ソフトウェア技術者は、例えば新しいプログラム言語などの自己啓発が自信に強めに作用し、それに対して、ハードウェア技術者にとっては例えば実験・検証などから得られる物理的な経験による学習効果の積み重ねが自信に強めに作用するように思います。
技術力の向上にとって、仕事を通しての学びと新しい技術を学んで自己啓発することがともに大切であることを示唆する結果ではないでしょうか。
この結果は、企業の経営者の方々にとっても大切な示唆を含んでいます。中長期に企業競争力を高めるためには、技術者が十分な自己啓発時間を確保できる制度と仕組みを構築し、その制度・仕組みが使いやすい職場になるようにリーダーシップを発揮していただきたいものです。
同志社大学STEM人材研究センターの目的の一つが、「科学技術の領域で活躍する方々がより創造的に活躍できるための環境と施策の構築に資する」研究を行うことです。日本の科学技術発展のためにも、多くの技術者が適材適所で活躍できる環境作りに寄与できる研究を行っていきたいと思います。