2017年1月にテクノプロ・R&D社に入社した山本隆晴さん。山本さんはテクノプロ・R&D社へ入社する直前まで、北海道大学の遺伝子病制御研究所で助教を務めていたそうです。アカデミアから民間企業へ転身する決断を後押ししたものは何だったのか、どのような思いを抱いてテクノプロ・R&D社に入社したのか、そんな気になるあれこれについてご本人にお会いしてお聞きしました。
研究者としての成長を求めアカデミアに飛び込む
―まず、山本さんの経歴について教えていただけますか。
山本 私は、大学の理学部生物学科を卒業後にヤクルト本社に入社し、中央研究所でビフィズス菌の分類研究や癌の形成にかかわる化学物質の研究などを行っていました。でも、研究を進める過程で研究自体のスキルや経験はもとより、考え方や客観的にデータを見る力など、研究者としての力量不足を感じはじめたんです。そこで一念発起して、3年勤務したヤクルトを退社して奈良先端科学技術大学院大学※1に入学しました。
(※1:1991年に奈良県生駒市に設置された、大学院に特化した研究教育機関である国立理工系大学院大学で、国家戦略「科学技術立国」を目的としている。)
そういえば、私はその大学院の1期生でしたが、今、一緒に仕事をしている柏リサーチセンターの櫻井センター長が同じ学校の2期生だったんです! 入社した後にそれを聞いた時には本当に驚きました(笑)。
大学院では、細胞の増殖や細胞同士の接着に関与するシグナル伝達を制御するタンパク質の機能解明が主な研究テーマです。バイオサイエンスの博士号を取得した後もそのまま奈良先端大の研究室で1年間、ポスドクとして研究を継続しました。
次に北海道大学の遺伝子制御研究所に移り、そこで17年間助教として研究を続け、今年テクノプロ・R&D社に入社しました。
ポストの少なさと教授の定年が外に目を向ける契機に
―なぜ、大学の助教という立場から民間企業への転職を決意されたのですか?
山本 北大で助教をしていた頃は、研究に没頭するかたわら、アカデミアに残るため―というより「研究を続けるため」と言った方が正確かもしれません―に、准教授など独立した研究ポジションに就くことを模索していました。ただ、エスカレーター式に助教から准教授に繰り上がるというケースは基本的にめったにありませんので、博士号を持っている人向けの求人ポータルサイト『JREC-IN』などを利用してさまざまなポストを探し、いくつか応募もしました。しかし生命科学系の准教授1人の求人に対して100人以上の博士が殺到するような状況で、インパクトファクター※2の高い研究論文を発表していない限り面接にすら辿り着けず、准教授になるのはなかなか簡単ではないことを痛感しまして……。
(※2:文献引用影響率。特定のジャーナル(学術雑誌)に掲載された論文が特定の年または期間内にどれくらい頻繁に引用されたかを平均値で示す尺度。)
また、ちょうどその頃は、北大の研究室で私がお世話になっていた教授の定年が近づいていた時期でもありました。大統領や総理大臣など、国のトップが代わると、決まって主要な閣僚やスタッフも一新されますよね。大学でも教授が代わる時には同じようなことが起こるのが慣例です。教授が交代すれば研究テーマも変わるので新たなメンバー構成になるのは必然ですし、そういった現実は私自身も理解していましたから、いよいよ本格的に次の仕事を探さなくてはならない時期が来たことを感じたんです。そこで、インターネットを使っていろいろな研究職の求人を探し始めました。
テクノプロ・R&D社に出会い再認識した「研究を続けたい」という想い
―R&D社に興味を持たれた理由をお聞かせください。
山本 ある時にふとテクノプロ・R&D社のホームページを見る機会があったんですが、その時に未来が開けたような感覚がありました。自分はアカデミアに残りたかった訳でも、准教授や教授になりたかった訳でもなく、「研究を続けたい」というのが本来の望みだったはず、と。その時はテクノプロ・R&D社について深く調べなかったんですが、民間企業も視野に入れ直した上で改めて職業紹介会社や転職専門サイトに登録し、研究の空き時間を見つけては仕事探しをしていました。幸いなことに、私自身には先ほどお話しした通りヤクルト本社に勤めていた経験もありますので、民間で働くことに対して抵抗を感じる部分はまったくありませんし、むしろ好意的にとらえているくらいなんです。なのに仕事を探し始めた当初、なぜか不覚にも民間企業の存在をすっかり忘れていまして(笑)。
そんなある日、テクノプロ・R&D社からスカウトメールが届いたので内容を見てみると、「んっ?この会社知ってるぞ!
たしか生物系や化学系の研究者を派遣する会社だったな……」と思い出し、急にテクノプロ・R&D社への関心が高まりました。相思相愛とまでというと大げさかもしれませんが、タイミングが良かったんでしょうね。
早速、コンタクトを取ったところテクノプロ・R&D社の方に直接お会いできることになったので、予習のためにと会社についてより詳しく調べてみると、派遣だけではなくリサーチセンターも保有して受託事業も行っていることが分かり、ますます興味が深まって、最終的に入社を決めました。
アカデミアで得た経験・知識を研究や若手育成で活かしたい
―まだ入社間もない時期ではありますが、実際に入ってみていかがですか?
山本 リサーチセンターは落ち着いて研究することができる、研究者にとって恵まれた環境ですので、実社会に役立つ研究を今後少しでも多く手がけていきたいという意欲が湧いてきています。私自身、これまで基礎研究を十分にやってきましたし、知識やスキルについても一定のレベル以上にあるという自負はありますので、それをしっかりと役立てていきたいですね。
また、テクノプロ・R&D社は多くの若手研究者を採用している会社ですから、研究内容から日常生活に至るまで学生の『よろず相談相手』になっていた助教時代の私の経験が活かせる場面もあるのではないか、と思っています。ただ、どんなことでも相談してもらえたら嬉しい反面、若手の相談相手に夢中になりすぎて研究がおろそかになると櫻井センター長に叱られてしまうかもしれませんので、研究も手を抜かずに(笑)。
何はともあれ、素晴らしい仲間と環境、そして多くのお客様……。入社してまだ日の浅い私ですが、周りの社員からも、会社からも『熱』を感じますし、その熱を受けて私の胸中にも様々な想いが生まれてきました。なんだか自分の人生が新しい時を刻み始めたような感覚で、非常にワクワクしています。
―今後のご活躍が楽しみです! 最後に、プライベートでハマっていることなどがあれば聞かせていただけますか。
山本 実は、私はマラソンを10年続けていて、まずは4時間切り、俗に言う『サブ4』を目標に練習しています。まあ、ストイックな感じではなく「ゆるゆると」ですけど(笑)。ちなみに、マラソンは世界で年間数100レース開催されていますが、サブ4を達成できる人は出場者全体の20%ほどです。私もぜひ、その中に入りたいですね。
(2017.02.21)