皆さんは仕事を選ぶ際にどんなことを重視しますか。大手有名企業?永く働ける会社?経営の安定?給与?福利厚生?それとも企業や組織に属さずやりたいことをする?
人それぞれ重視する部分は異なると思いますが、社会人になったらどんな働き方をしたいかが、学生のうちに明確に決まっている人はどのくらいいるのでしょうか。社会環境の変化やライフスタイルの多様化により、従来の日本型雇用システムに限界が見え始めました。
経済に関する国の重要施策を討議する場 “規制改革会議” で、2013年から「多様な働き方」ついて継続的な検討が行われ、2016年5月19日に最終答申がなされました。これらを受けて、2016年9月2日に「働き方改革実現推進室」が設置され、安倍総理大臣自らが国をあげて「多様な働き方改革」を実現しようとしています。では、今の日本で何が問題となっていて、何をどのように改革しようとしているのでしょう?
今回は2回に分けて、現在、改革が進められている「多様な働き方」の紹介と、その実現に向けた具体的な施策について考察いたします。
本稿での話の流れは以下の通りです。
<その1(今回)> :日本型雇用システムの課題と働き方改革の方向性
1. 高度経済成長を支えた日本型雇用システムとその限界
2. 規制改革会議の唱える「多様な働き方改革」5つの考え方
3. 安倍総理の働き方改革会議始動に向けた記者会見
4. 働き方改革実現推進室開所式での安倍総理の訓示
<その2(次回)> :働き方改革の具体例
5. 多様な働き方の具体例としての「ジョブ型正社員」
6. ジョブ型正社員で実現するワークライフバランス
7. ジョブ型正社員とエンジニア派遣の相似性
高度経済成長を支えてきた日本型雇用システムとその限界
日本における第二次世界大戦敗戦からの復興、およびそれに続く高度経済成長は「東洋の奇跡」と謳われ、世界中から畏敬の念を抱かれてきました。この「奇跡」を支えた大きな要因は国民の労働力。今後も国際社会における日本の競争力を確保するためには、なにがなんでも維持、拡大していかなければなりません。
ここで、東洋の奇跡を下支えした日本型雇用システムを簡単におさらいします。日本型雇用システムでは、正社員は①無期雇用②フルタイム③直接雇用といった条件に加え、職務・勤務地・労働時間を特定されない「無限定正社員」という特徴があります。海外でも①~③の特徴を有すレギュラーワーカーは存在しますが、具体的な契約を交わすことなく雇用主の都合で仕事内容や勤務地をはじめとした労働条件が変わりうる日本の雇用形態は、国際的にみて非常に稀なものです。
日本型雇用システムはこのように使用者側の人事裁量権に無限定的側面があることが特徴で、その結果、無限定がいつしか無制限であるかのような誤解が生じることがあります。ブラック企業はこの「無限定正社員」制度の“悪いとこ取り”と指摘されることさえあります。
しかし、世界でも例を見ないスピードで進行する少子高齢化、ライフスタイルや価値観の変化、IT技術の発達、グローバル化などを背景に、働き手や雇い手のニーズが多様化し、今までと同じような雇用システムだけでは、現在の雇用を維持することはもとより、一億総活躍を実現することは困難であるといえます。
働き手のニーズの変化
- 時間や場所にとらわれずに働きたい
- 育児・介護をしながらちゃんと働きたい
- 年齢・性別に関係なくもっと活躍・貢献したい
雇い手のニーズの変化
- 人手不足で困っている
- 多様な人材を活かし生産性を高めたい
規制改革会議の唱える「多様な働き方改革」5つの考え方
規制改革会議の雇用ワーキング・グループでは、上記のような働き手・雇い手のニーズの多様化、日本型雇用システム限界、具体的な規制改革項目の社会的ニーズの高まりを背景に、以下5つの改革案が打ち出されています。
① 時間や場所にとらわれず柔軟に働ける仕組みづくり
② 就職・転職が安心してできる労働環境づくり
③ 実力を伸ばし、力を発揮できる労働環境づくり
④ 健康・安全・安心に働ける職場づくり
⑤ 公平な処遇で活躍できる仕組みづくり
これらが実現されることで、生産性の向上、経済の活性化に加え、雇用環境における魅力ある選択肢が増え、すべての人が活躍できる社会が実現すると主張されています。
2016年8月3日 安倍内閣総理大臣記者会見「目指すは戦後最大のGDP600兆円。さらには、希望出生率1.8、介護離職ゼロ。この3つの“的”に向かって“一億総活躍”の旗を一層高く掲げ、安倍内閣は“未来”への挑戦を続けていきます。」 |
2016年9月2日 働き方改革実現推進室開所式での安倍総理大臣の訓示「『働き方改革』にいよいよこれから我々は着手するわけでありますが、一億総活躍社会を目指す私たちにとって『働き方改革』は最大のチャレンジであります。」 |
次稿では、具体的にどのようなアプローチのもと改革を実現しようとしているのか、「ジョブ型正社員」「ワークライフバランス」に焦点を当てて掘り下げてまいります。
調査並びに報告:株式会社スマートウィル(報告:2016年9月9日)
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