ひとくくりに「エンジニア」といっても、40年のキャリア形成は千差万別です。現場に一生を捧げる職人気質なエンジニアもいれば、経営幹部となって会社全体を動かす人、はたまた起業する人もいます。経営幹部や起業家になりたいなら、優秀なエンジニアであるとともに優秀なビジネスパーソンである必要があります。今回は「起業家」を例に、優秀なビジネスパーソンの登竜門として派遣エンジニアを考えてみたいと思います。
日本経済を支えてきた中小企業
突然ですが、皆さん「下町ロケット」をご存知でしょうか?
池井戸潤さん原作の小説「下町ロケット」をドラマ化したもので、阿部寛さんが主演を務めた大ヒットドラマです。信念を持ち困難に立ち向かう佃製作所社員の姿に力をもらった方も多いのではないでしょうか。この小説は、中小企業の技術力の高さを耳にした池井戸さんが実際に町工場で行った取材を基に、イメージを膨らませることで生まれました。
「ものづくりの国 日本」を支えてきたのは、世界に名だたる大企業だけではなく、ニッチな技術を守り、高めてきた町工場でもあるのです。
「中小企業白書2014」によると、近年中小企業庁は、地域活性化の最重要施策のひとつとして「中小企業・小規模事業者の市場進出」を掲げ、「起業大国」実現に向けた起業家支援に乗り出しているとのこと。
「経験、資金、コネクション・・・どれをとっても不安はあるけれど、いつかは経営者に・・・」。今ならば、そう考えている若者が夢を実現するのもそう遠くないことかもしれません。
若手起業家は減少傾向も、IT分野への挑戦は堅調
しかし、起業希望者にとって最高の追い風が吹いているにもかかわらず、起業希望者及び起業家の割合は年々減少傾向にあります。中でも顕著な特徴は、20代の起業モチベーションの低下です。
性別及び年齢別の起業分野
起業希望者及び起業家の年齢別構成の推移
それでは、データを深堀りし、夢を実現した若手起業家/起業希望者がどの分野に多いのか見てみましょう。下図をご覧ください。29歳以下では「学術研究、専門・技術サービス業」および「情報通信業」等のいわゆる技術系分野の起業の割合が合わせて20%を占め、比較的高い傾向にあります。特に「情報通信業」の分野は、他世代と比較し突出しています。
性別及び年齢別の起業分野
エンジニア志望かつ若いうちに起業を視野に入れている皆さんにとって、朗報といえます。事実、毎年アメリカの経済誌「フォーブス」が公表する世界長者番付によると、世界で成功を収めている人物の中には、エンジニア出身かつ30代前半までに起業している人が数多く名を連ねています。日本に目を向けても、グリーの田中良和氏、ドアンゴの川上量生氏、歴史を遡りますとホンダの本田宗一郎氏、トヨタの豊田喜一郎氏など・・・枚挙に暇がありません。
「フォーブス」版 世界長者番付2016
ある日突然「エンジニア」ではなくなる可能性も!?メーカーエンジニアのジレンマ
しかし、エンジニアにとっての「起業力」である技術スキルや対人能力を磨くための環境が、どこにでも転がっているわけではありません。例えば、メーカーエンジニアの場合、花形部署は新規商品開発部門や研究部門かも知れませんね。実力が伴い、またタイミングよくそのような部門に所属になったとしても、会社の事業方針の見直し、競争力の低下、時代のトレンドの変化など様々な要因で研究部門が縮小され、その結果、営業や業務支援部門に異動する可能性は低くないのです。不慣れな業務をこなしながら、最新技術に触れる機会も少ない職場環境で、生活のためだけに働く「普通のサラリーマン」になった自分に気づく・・・そんな悲しいことは決して他人事ではありません。
「派遣エンジニア」という選択が与えてくれるエンジニア兼ビジネスパーソンとしての成長
なぜエンジニアがメーカーに派遣されるのか分かりますか?
「メーカーとして注力したい領域があり、大きなプロジェクトが動き出す。しかし、その分野に精通したエンジニアを社内で調達することができない・・・。」このような課題を解決することが目的です。派遣されたエンジニアは、クライアントメーカーが必要とする知識やスキルを駆使してプロジェクト単位で関わることとなります。
どの工程に関わり、どのような経験ができるかは、エンジニアの将来を考えた派遣会社の戦略もありますが、同程度にエンジニア自身の希望や将来の夢が反映されます。ある一定の領域のプロフェッショナルになるも良し、一つの企業に数年常駐することでマネージメント能力を磨くも良し・・・。メーカーエンジニア憧れの花形部署を複数経験しながら、自ら望んだキャリアプランを描けるのです。
活気のある職場で、最新技術に触れながら多くの人との関わりの中で結果をだしていく、自分自身の成長が感じられる瞬間ですよね。派遣エンジニアとしての働き方は、まさに今回取り上げた「起業家」や「経営幹部」を目指す皆さんが、エンジニアとして、またビジネスパーソンとして多面的に成長していく上で、条件が整った「穴場」といえるのではないでしょうか?
調査並びに報告:株式会社スマートウィル(報告:2016年8月22日)
参考
・総務省「中小企業白書2014」
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