株式会社テクノプロ テクノプロ・IT社 公共ソリューション事業部の大上 正慶さんと中元 良太さん。自治体向けインフラSEとして13年の経験を持つ大上さんと、20年間の市役所勤務からIT社に転職した中元さん。2人の強みを活かしたソリューションサービスについてお聞きしました。
PROFILE
大上 正慶Oue Masayoshi
テクノプロ・IT社公共ソリューション事業部
中元 良太Nakamoto Ryota
テクノプロ・IT社公共ソリューション事業部
運用・保守は言葉に似合わず「攻めの業務」
まず、はじめに現在の業務についてご紹介ください。
大上 私たちの仕事内容は、わかりやすく言うとネットワークやサーバの運用・保守の業務です。運用・保守といっても、IDアカウントや端末の管理、ウィルスやスパム等への対策、ファイル管理やメール管理、他システム接続の調整やサーバ構築、そしてインシデント対応など、さまざまな業務を担当します。
私たちが所属しているのは公共ソリューション事業部という部署で、一般に「公共」というと広義には電力やガスなども含まれますが、私たちは自治体に特化してサービスを提供しています。
私はインフラ業務に携わって13年になりますが、インフラに関する業務は幅が広く、決して単純なものではないという認識は経験を積んだ今もずっと変わりません。一見それぞれが別々に機能しているように見える各種のシステムなどを全体として把握する必要があります。その上で、システムの不具合や運用上の不都合を発生させることなく、職員さんが困らずに仕事を行うことができ、住民の皆さんが快適にサービスを受けられる環境を先回りして提供する仕事です。
「運用・保守」とだけ聞くと「守りの業務」のように感じるかもしれませんが、提案をしながら進める業務が多く、言葉から受ける印象以上に「攻めの業務」と言えるかもしれません。
システムの「最後の砦」としての責任とやりがい
自治体におけるシステムの運用ならではの特性があれば教えてください。
中元 私は、IT社に入社する約1年前まで広島県内の市役所に約20年間、職員として勤務していましたので、内部のことを知っている立場から自治体のシステムについて簡単にご説明しようと思います。少し極端な言い方になるかもしれませんが、そのほうがIT社の公共ソリューション事業部のサービス内容や役割をよくご理解いただけると思いますし、関係者の皆さまも私自身が職員だったことに免じてご容赦いただけると助かります(笑)。
まず自治体の業務で前提となるのは、国の制度や方針の変更などに伴って、これまでの業務内容が変わったり、新たな業務が増えたりすることがあるという点です。そういった制度や方針の変化はワークフローの変更なども伴いますので、当然ながら業務のために使用している各種システムやアプリケーションもそれに合わせて改修する必要があります。
しかし、そもそも職員はシステムに関する専門家ではありません。システム自体を深く理解している職員はほんの一握りだと思いますので、これらの変更をどのようにシステムに反映するのかについてはほとんどの人が「皆目、見当が付かない」というのが正直なところでしょう。その結果、日頃から取引のあるITベンダーにシステム改変の検討や見積もりなどを依頼し、提出された仕様の内容や金額の妥当性も正しく判断できないまま発注することが多いというのが現状です。つまり、いわゆる「お抱えベンダー」に言われるがままシステムを導入・変更しているというのが一般的な姿で、それに加えて団体の都合に合わせた個別カスタマイズを施しているケースが多く、同じシステムを使っていても機能や仕様は少しずつ違うものになっている状況だと思います。
これまでの自治体では、さまざまな業務を担当することによって視野の広い行政の専門家を育成することを目的として定期的な人事異動が行われますので、ひとつの業務に長年携わって専門性を高めるケースはほとんどありませんでした。このことはシステム部門に関しても例外ではなく、システムに精通した専門家が育つ環境ではないということになります。自治体がITベンダーに頼らざるを得ないのは、当然の帰結と言えるかもしれません。
大上 私は現在の職場に勤めて13年になりますが、中元さんが言われるように自治体では定期的に人事異動がある背景もあり、システムの全体像(構成・設定・背景)など、理解されていない状態でさまざまな要望・お問い合わせがあります。そういった中で長年業務に携わらせていただいていることから、過去の状況やシステムの変遷などを理解していることは、ユーザー対応も含めた現在の業務に非常に役立っています。
時に必要な事前確認・調整がされないまま他課所管システムの更改や新設に伴うネットワーク接続の話が突然舞い込むこともあります。当然、未調整ではネットワークへの接続を許可できないため、システムの接続(稼働)の延期をお願いするケースもあります。
要望通りに後先を考えずにシステムを接続することは比較的容易ですが、接続されるシステムがどのようなデータを扱うのか、アドレス帯は重複しないか、セキュリティ対策は取られているかなど、さまざまな課題を網羅的に把握・検討し、既存業務への影響や、大切な情報が滅失したり流出したりすることがないよう、適切な対処をしながらシステムの接続を行う必要があります。
多少大げさな表現になるかもしれませんが、各システムが接続される環境が無法地帯にならないよう、セキュリティやルールを守る「最後の砦」とも言えるかもしれません。 「最後の砦」という意識を持って業務に臨むことで、より強い責任が生まれ、より良い成果につながり、その結果お客さまからも感謝され良好な関係を紡いでいくことができます。そこにやりがいを感じています。
特定の製品に縛られないからこそ実現できる「お客さまファースト」
技術力だけではなく、お客さまの課題に正面から向き合うことが求められるんですね。
大上 私たちの業務には間違いなく確かな技術力は必要です。ただ、技術力について大切なこととして、よく「ノウハウの共有」といったことなども言われますが、技術的なノウハウ共有は専用サイトもたくさんありますので比較的容易だと思うのです。
その一方で、自治体業務という複雑かつ多様な業務に関わる上では、技術力だけではなく深い業務知識がないと職員の皆さんが本当に困っていること、あるいは期待していることを本質的に理解できません。そういった面では、自治体のさまざまな業務についての専門的な知見を持ったメンバーが集まって気軽に情報交換できる公共ソリューション事業部は、業務を進める私たち自身にとって大変心強いのはもちろんですが、自治体の職員の方にとっても強い味方になることができますし、まさに『技術』と『人』のチカラが結集された事業部だと感じます。
中元 また、自治体向けにサービスを提供するという意味では、当社が技術サービスに特化していることもメリットになっていると思います。自治体向けパッケージソフトのような自社製品を持っている場合は、その製品の販売が事業拡大に欠かせませんが、私たちはそのような自社製品を持ちません。だからこそ、特定のITベンダーの製品に肩入れすることなく、自治体の担当者が解決したい課題や実現したい機能に焦点を絞ってシステム選定などもサポートできます。大上さんの言うとおり、まさに『技術』と『人』のチカラによるソリューションであると言えますし、「お客さまファースト」を真に体現した支援ではないかと考えています。
システムへの思いが捨てきれず自治体を離れてIT社へ
中元さんは、もともと自治体の職員だったとのことですが、どのようにしてIT社に入社されたのでしょうか。
中元 私は新卒で公務員になり、税務徴収業務を担当した後、広報部門に異動となったのですが、その広報活動の一環として市役所のウェブサイトに掲載する情報の更新なども担当していました。その際に、サイトの仕様書を見たりしながら仕組みを理解することに興味を持ち、次第に簡単な機能の追加やリニューアルもできるようになったんです。
中元 その後、情報システムの担当部署に異動となったのですが、先ほど少しご説明した通り職員がシステム開発をする訳ではなく、携わっていたのはITベンダーに対する発注側窓口の業務です。実際の作業としては、発注のための自治体内部の部署間調整をしたり、総意をとったりすることがメインでした。
システムに対して興味を持ち、初歩的な知識が身に付いてきたこともありましたし、また、このまま役所にいてもいずれ定期的な異動でシステムと無関係な部署に異動する可能性が高いことは容易に想像できました。40代での異業種への転職ですから多少不安に感じる部分はありましたが、最終的に「自分がやりたい仕事をしっかりやれる会社で働きたい」という思いが捨てきれず、思い切って退職を決意し、IT社に入社しました。自治体向けにサービスを提供している公共ソリューション事業部の募集に魅力を感じ、「これまでの私の市役所での経験が活かせるのではないか」と考えたことが、転職先としてIT社を選んだ最大の理由です。
大上 自治体の業務知識が豊富な中元さんが来てくれて、これまで何となく把握はしていたものの深いレベルまで理解が至らずにいた業務内容も一気にクリアになり、システム変更の裏側にある制度変更などの概要を自治体側に説明することもできるようになりました。それにより、これまで以上に職員の皆さんから信頼を得られたと実感しています。
公共ソリューション事業部としては、中元さんのような方にどんどん加わって頂きたいと思っています。
テクノプロ・IT 社 公共ソリューション事業部事業部長 石垣善史さん
2021 年7 月に公共ソリューション事業部を立ち上げて1 年が経ちました。現状をお聞かせください。
石垣 今回インタビューいただいた大上さんと中元さんは、お客さまに対する姿勢や対応という面で抜きんでています。さらに、大上さんがこれまで培ってきた技術力に中元さんの業務知識が加わったことで、2人の強みが相互補完されてサービスがますます高品質になり、「おもてなし」と呼べるようなレベルのサービス提供が可能になり、お客さまから厚い信頼を獲得できました。
希少価値の高い技術を習得することももちろん有益なのですが、その技術を適切にお届けするためには、目の前のお客さまの業務や行動をしっかりと理解した上で発言できるように、ビジネススキルを断続的にレベルアップすることが欠かせません。お客さまと向き合ってフロントで活躍する技術社員がエキスパートとしてステップアップし、公共ソリューション事業部のメンバー全員で自治体の課題を共有することで、提供サービスの高品質化を図り、サービス提供を通じて社会貢献や働き甲斐を実感できる組織を目指しています。
全国の自治体、そして自治体システムを専門に扱うベンダーから組織として、また個人として頼られる、『人』が主役のサービスをこれからも提供していきたいと考えています。