コロナ禍で催し物を主催される皆さんのご苦労は絶えないことと思いますが、各主催団体による十分な感染対策がとられながら、徐々にではありますが開催の知らせが耳に届くようになりました。
今回、テクノプロDoではすっかりお馴染みとなりましたグループ認定クラブ・サークルの「テクノプロ・IT 福岡RC」が参加したのは、2021年3月14日に開催された「第4回水上(みずかみ)マウンテンパーティー」。何だか“パーティー”と聞くと、楽しそうだけど感染対策は大丈夫?と、つい心配になってしまいそうですが、そのような心配は全くご無用。パーティーとは名ばかりの想像を超える過酷なトレイルランニングだったようです。本大会は、昨年9月6日に開催が予定されていましたが、熊本県の感染リスクがレベル3に引き上げられたことを受けて延期になっていました。
マウンテンパーティーの会場となったのは、九州のほぼ中心地、球磨川(くまがわ)の源流が流れ出す熊本県球磨郡水上村。球磨川と言えば、最上川(山形県)、富士川(長野県・山梨県・静岡県)とともに日本三大急流に数えられ、日本でも有数の急な流れを誇る川です。こんな急流を生み出す源流地域で、誰もいない山中をひたすら走るトレイルランニング。聞いただけでもその過酷さは容易に想像できます。
初めての参加ということもあり、情報収集のためインターネットで調べたところ、「九州屈指のハードコース」「アップダウンがとにかくきつい」「コースの至る所で集団ロスト(迷子)が発生」など、レースの過酷さを伝える情報ばかりでした。何と言っても、前回の第3回大会の完走率が56%、第2回に至っては36%と、普通のマラソン大会ではとても考えられないような完走率が、まさにサバイバルレースの様相です。私がエントリーしたロングコースは、制限時間14時間30分以内にマラソンより少し長い64kmを走破するというものです。時間と距離だけを聞けば、なんてことないのですが、参加者を苦しめるのは64kmを走ることによる4,000mもある累積標高なんです。登りっぱなしではなく、勿論下りもあるのですが、累積とは言え富士山よりも高い標高を14時間30分以内で走破しようというのですから、出場者の気が知れません(私も含めてですが・・・笑)。
走り出すまでは、コースの特性上登りっぱなしではないことを、幸いなことのように考えていたのですが、結局私を苦しめたのは、まさにこの下りでした。
水上村に到着
早朝5時のスタートに向け、前日受付ということでしたので、この機会に以前から行きたいと思っていた「人吉(ひとよし)復興コンテナマルシェ」に立ち寄ることにしました。人吉商工会議所が運営する「人吉復興コンテナマルシェ」は、昨年7月の豪雨による球磨川の氾濫で被災した人吉市の飲食店が集まる仮設商店街で、7棟の木造コンテナからできています。わずかでも貢献できればと思って立ち寄ることにしたのですが、到着したのは陽も傾く時間になってしまい、すでにほとんどのお店が閉店してしまいました。それでも、閉店間際のお店で弁当やおやつを買い込んで、目的地の水上村に向かったのですが、思いのほか時間がかかってしまい、着いた時には受付の時間を少しばかり過ぎてしまいました。慌てて受付に向かい、運営の方に遅刻をお詫びしてなんとか無事に受付を済ませることができ、ほっとして車を指定の駐車場に移動。人吉で買い込んだ弁当やおやつを食べて車中泊で明日に備えます。朝5:00スタート
3月の山の中はまだまだ寒いので、ギリギリまで車の中でねばって、5分前に会場に着くと、既に必携のヘッドライトをつけた参加者が準備万端です。早速、一番後ろに並んで、いよいよスタートです。
スタートは、新型コロナ対策のため50人ずつ2分おきのウェーブスタートスタイルでした。スタート後、しばらく街灯のある舗装路を登っていくと、登山道へ突入。ここからは街灯の類は一切なく、真っ暗闇の中を自分のヘッドライトの光のみを頼りに走っていくことになります。すると、突然四つん這いになって手も使わないと登れないような急斜面が行く手を阻み、どこまで続くのやら先がまったく見えない状態でただひたすら登っていく感じになります。このような急斜面が何度も登場し、さながら、何かの訓練に参加しているかのようです。
私は普段の練習で自宅近所の裏山を走ったりしていますので、登りは割と得意なのですが、下りは思った以上に全くダメで、少しずつおっかなびっくりという感じで下ることしかできません。登りは前の人にしっかりついて、少々暗くても危なげなく走れていたのですが、下りに差し掛かったとたんに、若くて体の柔らかい人たちにどんどん置いて行かれ、気がつくと前後に人影はなく、暗闇の中に一人ぼっち。
道と思われるところをなんとか進んでいたのですが、どうもおかしい。こんな時のためにと、主催者推奨の登山アプリ「YAMAP」で現在位置を確認。案の定ルートを大きく外れていて、早速のロストです。ルートはどうやら左手の方のようです。今来た道を戻る気にもなれなかったので、左方向へ藪の中を無理やり進むと参加者のヘッドライトを見つけることができ、幸いにもコースに復帰できました。「YAMAP」には、この後も何度もお世話になることになってしまいました。
四苦八苦しているうちに、ようやく辺りも明るくなり、コースも林道になりましたので、気持ち的にも一息つきながら、しばらく前の人について走っていると、「やってしまった!」。前を走る人が立ち止まって辺りをキョロキョロ、ネットでみた集団ロストの一員になってしまいました。幸いにも今走ってきた道を少し戻ると、分かれ道で後続の人達に会うことができ、コースに復帰できました。
ロストには見舞われましたが、体力的にはまだまだ余裕もあり、その後の市房(いちふさ)ダム湖畔の道路は桜の名所にもなっているとのことで、青空に満開の桜が映える日本的なとても美しい風景を楽しみました。
他のマラソン大会同様、水上マウンテンパーティーでもエイドステーション(給水所)が設けられています。さらにこの大会では事前に案内されていない隠しエイドがいくつかあり、看板に大きく「裏」と書かれています。「裏」と書かれたエイドに立ち寄ると、マラソン大会では初めてお目にかかるタピオカドリンクが配られていて、私はミルクティーと苺ミルクの2杯を頂きました。
まさに山あり谷ありのコースと格闘し、コース全体の半分も過ぎるころには、さすがに体力が落ちてきて、少しずつ走るのがつらくなってきた頃、私に追い打ちをかけるのが、またもや手を使わないと登れないような、めちゃくちゃな急斜面です。一見コースなのか疑いたくなる斜面ですが、木に白いマーキングテープが巻かれているので紛れもなくコースです。こうなるともはや斜面ではなく、何の競技なのかもわからなくなる感じです。
やっと山を登り切ったと思ったら、当然次に待っているのは私にとっては登りよりもきつい下り道です。急すぎて下が見えないような斜面を一直線に下ることは到底無理ですので、こまかなジグザクを何度も何度も折り返して下っていくのですが、当然こんな私はこの区間でも後から来たランナーに置いてきぼりにされてしまったのは言うまでもありません。
いくつもの急斜面を登ったり下りたりを繰り返しているうちに体力は確実に削られ、もはや疲労困憊です。残り10kmほどですが、この後は一気に下りです。これがまた私にとっては非常につらく、とにかく足を滑らせて落ちないように必死に歩を進めたのですが、健闘むなしく、また多くのランナーに抜かれてしまいました。
やっとの思いで残すところあと6km地点にある最後のエイドにたどり着いた頃には、タイムも順位もあきらめモードで、アイスクリームやおはぎをたらふく頂き、ゆったりと時間を過ごしてから残る6kmのロード区間に走り出しました。走り出して直ぐに奥球磨ループ橋を上ってダム湖畔を走っていくのですが、もはやゆっくりとしか走れない私を颯爽と追い抜いていく人もいて驚きです。
64kmのコースを10時間20分かけてようやくゴール。ゴール後は、鹿肉カレーと鹿肉バーガーをいただきました。後日発表された順位は182人中54位と最近のレースでは順位としては遅いですが、途中10回近くもロストしたことや、ぬかるんだ道で足を滑らせて何度か転んだこと、下りであれだけ抜かれたことを考えると、まあまあ満足です。
天気に恵まれ気温も涼しくて、山の中を(一部を除いて)気持ちよく走れて楽しかったですが、感想としては「もうトレイルランニングなんて絶対に出るもんか!」というところです(笑)
もちろん、もっと体に優しいトレイルランニングの大会はいくらでもありますし、何より大自然の中を自分のペースで駆け抜ける爽快感は普通のマラソン大会では味わえないものです。興味をもたれた方は自分に合った大会を探して一度参加してみてはいかがでしょうか。
レポートでもう懲り懲りというようなことを言っていますが、Do編集部では、また来年もレポートがとどくのではないかと・・・。
(2021.03.14)