2018 年12 月7 日(金)・8 日(土)・9 日(日)の3 日間にわたり、第6 回科学の甲子園ジュニア全国大会が、つくば国際会議場ならびにつくばカピオで開催されました。科学の甲子園ジュニアは、理科、数学等における複数分野の競技に協働して取り組むことを通じて、全国の中学生が科学の楽しさ、面白さを知り、科学と実生活・実社会との関連に気付き、科学を学ぶことの意義を実感できる場を提供することによって、科学好きの裾野を広げるとともに、未知の分野に挑戦する探究心や創造性に優れた人材を育成することを目的としています。国立研究開発法人科学技術振興機構(JST)が主催し、全国の中学生を対象に開催されるもので、全国大会には、全国47 都道府県の代表選考で選抜された中学1 年生と2 年生で構成された1 チーム6 名の47 チームが出場します。
テクノプロ・グループは、JST のすすめる高校生を対象とした科学の甲子園、そして中学生を対象とした科学の甲子園ジュニアを応援しています。
全国大会は、筆記競技(非公開)・実技競技①・実技競技②の3 つから成り、それぞれの競技に300 点が配点され、各競技ごとの順位そして総合順位が決定されます。今回、実技競技①と実技競技②を会場となったつくばカピオで見学させていただきましたので、様子をご報告します。
実技競技① 『溶解熱はふたつある ~発熱と吸熱~』
2種類の試薬をそれぞれ純水に溶かしたときに出入りする熱に関する競技で、実験・課題・問題から成ります。実験では、試薬と純水の割合を変えて、その時の温度変化を記録し、課題では、濃度の異なる試薬ごとの時間-温度のグラフを作成したり、質量パーセント濃度-温度差Δt のグラフを作成したりします。この競技では、実験内容の理解、実験の技術力(試薬や器具類の扱い方)、考察力、そして限られた時間内に複数の作業を分担して進めるチームワークの良さが求められます。実技競技①については、事前に競技内容が公開されていませんので、まずは競技内容を読み解くところからはじめて、3 人で構成されたチーム内で役割分担を決めて手際よく作業を進める姿には感心させられました。
実技競技② 『ザ・キューブ2』
縦45㎝×横45㎝×高さ45㎝の空間内に、長さ10m幅50㎜のアルミテープ1 巻を「走路面」として、ワイヤーネット5 枚・L 型アングル8 本・針金1 巻などの製作材料で、直径20㎜重さ約32gのステンレス製の「球体」をできるだけゆっくり転がり落とす装置を製作し、「球体」が転がり始めてから装置の「設置面」に着地するまでの所要時間の長さを競う競技で、製作時間は80 分。また、より効率的な装置をデザインするという観点も審査に加味されていて、少ない材料で装置を製作したチームにはタイムボーナスが与えられます。このため、球体が転がり落ちる時間と材料の使用量を上手く掛け合わせた装置を製作するところがアイデアの出しどころになる競技と言えます。
実技競技②は事前公開競技ですので、各チームは指定された材料を使い地元で製作実験をしています。競技会場では、新たにゼロから製作することになりますが、あらかじめ3 人の役割分担まで決めて本番を迎えていますので、競技開始の合図とともに一斉に作業が開始されました。
全国大会の結果
◇総合順位(筆記競技・実技競技の総合得点)
1位愛知県代表:海陽中等教育学校
2位大分県代表:平松学園向陽中学校
3位神奈川県代表:横浜市立横浜サイエンスフロンティア高等学校附属中学校、栄光学園中学校
4位宮城県代表:宮崎県立宮崎西高等学校附属中学校
5位島根県代表:島根大学教育学部附属中学校
◇各競技の順位
筆記競技:1位愛知県代表、2位奈良県代表、3位大分県代表、4位東京都代表、5位宮城県代表
実技競技①:1位岡山県代表、2位宮城県代表、3位大分県代表、4位岩手県代表、5位神奈川県代表
実技競技②:1位茨城県代表、2位福井県代表、3位島根県代表、4位愛知県代表、5位岩手県代表
◇その他の受賞
チームワーク賞(チームワークに優れたチーム):香川県代表
女子生徒応援賞(女子3名以上を含むチームのうち総合成績最上位):大阪府代表
フレッシュマン応援賞(1年生を含むチームのうち総合成績上位チームで重複受賞を除く):富山県代表
実験スキル賞(実技競技①で優れた実験技術を発揮したチーム):神奈川県代表
工作デザイン賞(実技競技②で優れたデザインを開発したチーム):岩手県代表
本大会の予選となる都道府県大会には27,146名の生徒がエントリーし、全国大会では選抜47 チーム合計282名の中学生が、理科や数学に関する知識とその活用能力を駆使して課題に挑戦しました。
上記の通り、筆記競技で1 位、実技競技②で4位となった愛知県チームが総合成績では優勝しました。優勝した愛知県チームは、2019 年3 月に開催される高校生を対象とした「科学の甲子園全国大会」に挑戦することができます。
▼大会詳細はこちら
https://koushien.jst.go.jp/koushien-Jr/
取材後記
実技競技②は、昨年に続き「ザ・キューブ」。昨年は、なかなか検査に合格できず多くのチームが苦労する場面もありましたが、今年も競技そのもののルールは概ね昨年と同じものの、製作材料を大幅に見直すことで、装置が競技レギュレーションから逸脱してしまうことを少なくする工夫がなされ、正に各チームのアイデアや製作力を競う内容にリニューアルされ、競技名も『ザ・キューブ2』となりました。
ザ・キューブは、生徒たちが創意工夫のできる範囲も広く、製作にあたる生徒もアイデア出しの段階から楽しいと思いますし、各チームのアイデア溢れる装置を見ているこちらも楽しくなります。見学しながら、毎年「ザ・キューブ」を出題して頂きいつの日か1 時間以上転がり続けるような装置が登場してほしいと思ってしまいます。
(2018.12.09)
お問い合わせ
「科学の甲子園ジュニア」についてのお問い合わせは下記までお願いします。
国立研究開発法人科学技術振興機構(JST) 理数学習推進部 才能育成グループ
TEL:048-226-5665 E-mail:koushien-jr@jst.gp.jp